職場での過剰なストレスなどが原因で年々増えている「うつ」。
女性は男性の2倍と多く、なかには休職に至るケースも。
受診の目安や治療法、復職をサポートする仕組みを知って、「もしも」のときに備えよう。
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◆十分な休養と薬の服用で 軽いうちにしっかり治すことが大事
うつ病は、初期のうちは軽度で気分の落ち込みもあまり強くはない。しかし適切な治療を受けないでいると、次第に症状が強くなり、やがて仕事に行けなくなってしまうまでに。
「休職をしないためには、軽度の段階でしっかり治すことが大切。それには休養を十分とり、薬をきちんとのむこと。『今日は体調がいいから薬はいいや』などと、中途半端にしていると長引かせることになり、治りにくくなる」と五十嵐院長。
主な治療法は薬物療法と心理療法。抗うつ薬にはうつ病にかかわる神経伝達物質(右図)の量を調整する作用があり、症状や重症度によって使い分けや組み合わせが検討される。
従来のセロトニンやノルアドレナリンに働きかける薬に加え、昨年新たにドーパミンの量を調整する薬がうつ病の治療で使えるようになり、「やらなきゃと 思っていても体がついていかない、といった“焦燥感から来る不安”の軽減や、意欲・気力の改善が期待できる」(西松理事長)など、今までの薬で対応しにく かった症状への選択肢が広がった。
心理療法は医師やカウンセラーとの対話の中で、自分の心の問題に気づき、うつ病にならないものの考え方やとらえ方を身に付けて立ち直りを図っていく治療法で、基本的に薬物治療と併用で行われる。
代表的なものが認知行動療法で、「『考え方のクセ』(前回の記事参照)が極端にならないよう、より現実に見合ったものにして、心のバランスを取っていきます」(西松理事長)。
◆万一のときのために知っておきたい 職場復帰を支援するプログラム
うつ病を治すには、「規則的な生活を送る」ことも大切。「決まった時間に起床、食事、就寝をして、規則正しく生活すること」(五十嵐院長)。
とはいえ休職に至ってしまうケースもある。そんなときのために知っておきたいのが、「復職(リワーク)プログラム」だ。これはうつ病で休職後、症状が改 善して復職を目指している人を対象に、パソコン作業や軽スポーツなどを週2日、3日……と段階的に導入し、生活リズムの改善や、作業能力の向上、参加者同
士の心の支え合いなどの効果を期待するもの(下の図参照)。全国に約120の施設があり、利用するには主治医に相談し、近くの施設を紹介してもらう。
プログラムには復帰後の再休職を予防する目的も。「日常生活に問題がない程度に回復した本人が『復帰しても大丈夫』と主張し、主治医がその意をくんで『復 帰可』と診断書を書いても、いざ復職してみると、職場の要求レベルを満たせず再休職、というケースが少なくない」(五十嵐院長)。その点、プログラムを利 用すると、復帰後の仕事継続率が高くなる(右のグラフ)。
メディカルケア虎ノ門では、主に休職と復職を繰り返す、はじめての休職でも1年を超えるなど長期化する人を対象に実施。また、職場でセクハラやパワハラ を受けた女性は、男性がいると参加しにくいことから、あいクリニック神田では女性限定のプログラムを設けている。参加は復職の必須条件ではないが、復職 後、心身に負担なく勤続するための支援の仕組みがあることを知っておいて損はない。
※うつ病の正しい知識、医療機関などの情報はこんなサイトも参考に
☆☆この人達に聞きました☆☆
メディカルケア虎ノ門 五十嵐良雄院長 北海道大学医学部卒業後、埼玉医科大学、海外留学等を経て1988年秩父中央病院長、2003年より現職。リワークプログラムを行うデイケアを併設し、安全な復職の実現に取り組む。
あいクリニック神田 西松能子理事長 大阪医科大学卒業後、日本医科大学精神医学教室講師、コーネル大学医学部研究員等を経て現職。立正大学教授を兼任。女性対象のリワークプログラムを開発、実績を上げている。
日経ウーマンオンラインより
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