5歳以下の子供が夏場にかかりやすいウイルス性の感染症「手足口病」。昨年は全国的に大流行し、感染者数が過去最高水準となった。
国立感染症研究所によれば、今年も大分や宮崎など九州地方を中心に、1医療機関・1週間あたり(6月16日~22日)の患者数が警報基準の5人に迫る県(6月16日~22日)が報告されるなど、引き続き注意が必要だという。
手足口病とはどんな症状なのだろうか。感染症に詳しい新渡戸文化短期大学の中原英臣学長に改めて聞いた。
「病名の通り、手や足、口の中の粘膜などに2~3ミリ程度の水疱、発疹が現れます。ほとんどの患者は軽い症状で済み、特別な治療をしなくても数日で治りますが、まれに高熱が出たり、髄膜炎を起こしたりと重症化するケースも見られます」
7月上旬、千葉県内に住む主婦(36歳)は、子供が通う幼稚園から「手足口病の疑いがある」との連絡を受け、急きょ引き取りに行ったという。
「数日前から子供の口の中に白っぽい水疱ができていたのですが、単なる口内炎かと思っていました。小児科で手足口病の診断を受けてからは、食事をするのもつらそうなほど痛がったり、38度前後の発熱も続いたため、大事をとって1週間幼稚園を休ませることにしました」
重篤化の危険性は少ないとはいえ、「手足口病のウイルスは、つばを原因とする飛沫感染が多い」(都内の小児科医)ため、幼稚園の中には集団感染を恐れて医療機関での早めの受診や、軽症でも休ませるように呼びかけているところもある。
しかし、保護者の感染防止策は真っ二つに分かれているという。
「ウチは小児科の先生から“感染症がなくなった旨の治癒証明書”を発行してもらうまで幼稚園は休ませましたが、同じクラスの中には手や足に水疱ができてい るのに『子供は元気だし、自分の時間も忙しいから』と、ずっと放っておく母親もいます。結局、クラスの感染児童は増え続けて、その兄弟などにも次々と広 がってしまいました」(前出の主婦)
では、登園させるか否かの判断も含め、実際にはどこまでの対策が求められているのか。
「学校保健安全法」では、手足口病は【学校で予防すべき感染症の第3種「その他の感染症」】に含まれ、以下のように定められている。
<出席停止の基準は、病状により学校医その他の医師において感染の恐れがないと認められるまで。(中略)感染拡大を防ぐために、必要があるときに限り、校長が学校医の意見を聞き、第三種の感染症の「その他の感染症」として緊急的に措置を取ることができる>
最終的に、学校を休ませるべきかどうかは医師に委ねるほかないが、前述のように子供が元気にしているから、と医療機関も受診しないケースが多い。
前出の中原氏も、「手足口病だと気付かないほど軽症で治ってしまう子供も多いので、感染拡大を防ぐには、こまめな手洗いやうがいなどの予防策を取るしかない」と指摘するが、その一方でこんな見方をする。
「子育てと仕事を両立させている女性が増えているいま、子供が病気になったらすぐに仕事を休まなくてはならないという悩みを抱えています。
そんなとき、小児科のいる医療機関に保育室を設置した“病児保育”や、インフルエンザや手足口病のように他人に感染させる可能性がある間、子供を引き受けてくれる“病後児保育”の導入がもっと進めば、こうした問題もすぐに解決できますし、少子化対策にもなります」
保育の分野は<量(数)>の問題だけでなく<質>も問われている――と付け加える中原氏。感染症の流行を抑えるには、子供の健康管理はもちろん、多様化する子育て環境に即したハード面の整備も欠かせない。
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