国産の品薄高で輸入が急増している中国産タマネギから、基準値を超える残量農薬が相次いで検出されている。これを受け、日本政府は今月から輸入業者に対 し全ロット検査を義務付けた。中国側も原因究明に向け規制を強めており、同国からの輸入が急減する可能性が高まってきた。輸入商社は米国産など代替産地か
らの調達を模索するが、国産の引き合いが強まり、需給や相場に影響を与えることも想定される。
日本が輸入する中国産タマネギは年間25万トン。皮をむいた「むきたま」の状態で輸入されるものが大半で、外食や食品加工業界に浸透。昨年9月から10カ月連続で前年を上回る状況が続く。
しかし7月中・下旬、厚生労働省のモニタリング(サンプル)検査でネオニコチノイド系農薬「チアメトキサム」の基準値超えが2事例続けて発覚。同省は今 月8日、輸入業者に全ロット検査を義務付ける「検査命令」を出した。業者が検査体制を強めた結果、さらに10事例の基準超えも明らかになっている。
この時期、輸出量の大半を占める山東省の一部産地では、ネギやニンジンの栽培で「チアメトキサム」を含んだ農薬を使う農家が多い。関係者は「日本の基準が周知されずタマネギでも使われたか、他作物に散布して飛散したのではないか」と推測する。
基準値超えが相次ぐ事態に、中国は各地区にある中国国 家品質監督検査検疫総局(CIQ)での規制を強化。ある輸入業者は「以前のように安定的に輸入できるめどは当面立たない」と見込む。輸入価格(むきたま、 浜渡し価格)は先月までの1キロ45円前後が同70円以上まで高騰。商社からは「8月の輸入量は半減する」との声も上がる。
関係者が頭を悩ませるのは代替品の調達だ。米国ワシントン州産の入荷が増えるのは9月下旬。当面の仕入れ先としてニュージーランドや韓国からの緊急輸入 に動く商社もある。ただ「むきたま」で出す国は極めて少ないため「代替がきかない」との声もあり、今後加工業界が原料不足で混乱する可能性がある。
今月から出荷がスタートしている日本の一大産地、北海道産の調達を狙う実需者は多く、国産の需給逼迫(ひっぱく)、相場上昇も想定される。道産の作柄は 不作だった前年を上回る見通しだ。ホクレンは「国産に目が向いていることは好材料。生食、加工双方の需要にある程度応えられるようやっていく」と話す。 (高松和弘)
日本農業新聞
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