高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)の感染でニワトリが急死するメカニズムの一端を、京都府立大生命環境科学研究科の塚本康浩教授らのグルー プが解明し、このほど米医学誌に発表した。血管収縮物質と、結合して作用する受容体がともに増加しており、受容体をブロックする薬剤が致死率を大幅に下げ
ることを突き止めた。エボラ出血熱など出血性の感染症でも同様の仕組みが考えられ、新しい治療法の開発につながる成果という。
高病原性鳥インフルエンザを引き起こすウイルスのうち、強毒性のH5N1型はヒトへの感染例も多い。感染したニワトリは他の多くの病気のように徐々に弱るのではなく、急に死に至ることが謎だった。
グループは、インドネシアでニワトリのひなを使って強毒性H5N1型ウイルスの感染実験を実施。各臓器で血管に出血やうっ血などの症状が見られることに注目した。
肺の分析で、血管収縮物質のエンドセリンが通常の約3倍、エンドセリンの受容体が約1・5倍に増えていた。エンドセリンが急激な出血や虚血状態を引き起 こし、急死すると考えられるという。エンドセリン受容体の阻害剤を投与すると、感染から5日目の致死率を100%から約20%に抑えることができた。た だ、感染でエンドセリンと受容体が増加する仕組みはよく分かっていないという。
高病原性インフルエンザに感染したニワトリは殺処分が法律で定められている。治療することはないが、塚本教授は「ヒトのエボラ出血熱などの治療で、エンドセリンの阻害剤が治療薬として有効かもしれない」と話している。
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