デング熱を媒介「ヒトスジシマカ」身近に ウイルス流入で感染拡大の恐れ

 昨年夏、東京を中心に69年ぶりに国内流行したデング熱のウイルスを媒介する蚊「ヒトスジシマカ」が、大阪市内の公園や緑地など 10カ所で千匹以上捕獲されていたことが19日、分かった。大阪でも感染が広がるだけの数の蚊が身近に生息していることを示す数値だという。関西国際空港 発着の国際便の増加に伴い、デング熱が流行する東南アジアからウイルスが持ち込まれるリスクは高まっており、関西の自治体も予防に力を入れている。

 大阪市感染症対策課によると、昨年6~10月、靱公園(西区)など市内10カ所に蚊の捕集器を置いて調べた結果、ヒトスジシマカ計1153匹が捕獲された。

 最多は万代池公園(住吉区)の550匹。次いで矢倉緑地(西淀川区)の215匹、南港野鳥園(住之江区)の149匹の順。靱公園では90匹、長居公園(東住吉区)でも48匹を捕獲した。今年も調査している。

 近畿の他の県庁所在地でも昨年、京都市で299匹捕獲。神戸、奈良、大津、和歌山の各市は今年から調査を始めた。大阪市を含めてこれまでにウイルスが検出された個体はない。

 69年ぶりに国内での感染者が確認された昨夏の流行の中心は東京で、大阪では上京した3人の発症にとどまり、ヒトスジシマカが活動を止める秋の訪れとともに終息した。しかしこの夏も、新たに海外からウイルスが持ち込まれ、国内感染が広がるリスクがある。

 世界保健機構(WHO)の調査によると、日本人の往来も多い東南アジアでは今年もデング熱が流行中。すでにマレーシアで死者 158人を含む5万3823人、フィリピンで死者86人を含む2万8600人、ベトナムで死者12人を含む1万4474人、シンガポールで3868人-が 感染している。

 格安航空会社(LCC)の普及で関西国際空港の国際線旅客数は昨年度、過去最多の1352万人。入国者 からのウイルス流入を防ぐ水際対策が取られているが、ウイルスの潜伏期は2~14日ある。このため発症前に入国するケースも想定され、大阪府の担当者は 「完全に流入を防ぐのは難しい」と語る。

 感染防止には国内での努力が不可欠で、関西の各自治体は厚生労働省の指導を受け、家庭向けの啓発活動に力を入れている。

  大阪市によると、ヒトスジシマカに刺されないためには市販の虫除けスプレーが有効。長袖長ズボンを着用すれば防止効果は高まる。幼虫ボウフラが孵化する水 のよどみをつくらないことも重要。水がたまりやすいのは、植木鉢の水受け▽車両のビニールシートのくぼみ▽古タイヤ▽放置したバケツ-で、定期的な排水が 効果的という。

 ■デング熱 ヒトスジシマカなどによって媒介されるウイルス性の感染症。2~14日の潜伏期の後、発熱 や頭痛、筋肉痛が始まり、体や腕などに発疹が広がる。多くは1週間程度で回復するが、出血など重症化することも。東南、南アジアや中南米、カリブ海諸国で 発生し、世界で年間約1億人が発症していると推定される。日本では昨年、海外渡航歴のない人の感染が東京で69年ぶりに見つかり、計約160人に感染が広 がった。

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